記憶の遺留品

青春の残骸

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1年間 自分を試してみた
神童と呼ばれた私が、偏差値70の高校を卒業した私が、何処まで学問を極められるのか 何処まで平凡から遠ざかれるのか。


白状しよう、1日たりとも集中できた日なんて無かったのさ
ない込み上げる不安と焦燥感を薬で抑え付ける毎日だった
いつのまにか、立派な薬中だ


本当は勉強どころじゃあなかったんだろう、最初から。
それでも休養を良しとしない、休んでいる間に迫り来る内面の勉学に対する焦燥 強迫観念が私の心を休ませてはくれなかった


だから戦った
駄目なりに戦った
己の身の丈を知る
身の程を知る
今思えば、その為に。
私が得たモノは 得ようとしたモノはそれだった


今の私はかつての「エリート」と呼ばれていた私ではないのだ
そんな残酷な真実と現実を胸元に突き付けられた


どうやら私の病は集中力を喪失させる性質も持っていたらしい


やっと気付いたよ、此処までやったからこそ、気付けた
私は 只の 独りの 「凡人」に過ぎない…と。


何処かで「自分だけは」と自分を特別視していた
やれば何だってできるなんて、本気で信じていた

傲慢極まりなかったね
身も心もズタズタに裂かれて気付けた私の凡庸だったよ


諦め 妥協 受容 迎合 折り合い
何と表現したら正確なのかは分からないけど
そういう時期になってきてるんだと感じる
青年期ってやつなんだろう


今思う事は もう疲れてしまった。
ただ、それだけ。
何もかも、疲れた。
何も報われなかったな、結局。

そういう宿命を受けた人間だったのだろう、最初から。
私もこうして、所謂「大人」になっていくんだろう
叶わない夢を諦め 現実に妥協し 身の丈に合う行動をする
そんな、褒められも否定もされない そんな人間に。


残念ながら私の人生はまだ続いてしまうらしい
これから長ったらしい消化試合が始まる
一過性の感情に一喜一憂しないで 淡々と粛々と静かに生きる
誰かに迷惑をかけないように自分1人で自立する
もう、それでいいじゃないか。


どうせ此の考えもいずれは破綻するだろうけど
1人で生きていくなんて絶対に無理だけどね


こうやって未来を先読みして諦める器を予め用意しておくのが私のクセだ。どうせこうなると、心の何処かでは分かってるんだろう
そして 抗ったところで変わる訳も無い


昨今の人の心を描いた映画や漫画 ドラマや本では「抗い続ける事を美徳」としたり「逃げない強さ」を強調したり「何度でも立ち上がる姿」を私に見せつけてくる


その度に傷つく。
自分の無力さに傷つく。
何もできない弱さに甘えている自分に傷つく。
勝手に傷ついているだけの私の身勝手さに傷つく。
慰めで傷つく。
優しさで傷つく。
気遣いで傷つく。
思いやりで傷つく。
暖かさに傷つく。
どうあがいても傷つく。

そうして無気力になっていく
これから先も、ずっと傷ついていく

今のところ、死は選ぼうとは思わない
何故かは知らないけど、今は死にたくない
生きたくもないが。

自分に自信を持って向上心にあふれ 素敵な大人になりたいと願っていた13歳の私よ、本当に申し訳ない。
君に見せたくない姿を晒してのうのうと生きている。


ごめんよ。


君が最もなりたくなかったであろう人間に、私は成ってしまった。
どうか、こんな私を決して、決して、許さないで欲しい。

その代わり、君の描いた夢は 心の奥に 記憶の海に 匿おう

潰えた夢でも きっと君と私を慰めてくれるだろうから。
そしてやっと、心の底から休息を取れると思うから。